三体
December 30, 2024
今年は妻の育休が明けて、家庭と仕事と育児を夫婦で走り切った1年となりました。2人育児は大変かなーと思いつつも、子供は成長するもので、徐々に目を離していても大丈夫な時間が増えてきたのと、長男は1人でいろんなことが出来るようになってきたので頼もしい限りです。 100点満点で採点するなら、90点以上は出せたのではないかと。早朝のジム通いが習慣化されたことにより、安定して仕事で出力を出せているのと、単純に体力がアップしているので家庭も含めたハードワークに耐えられる状態となっています。運動習慣は大切ですね。 来年は、運動習慣に加えてしっかり結果にもコミットしていきたいのでボディメイク(体脂肪の減少)を本格的に取り組んで体力お化けとなることを目標にしようと思います。
2024年を一言で表すなら、自分にとっては「三体シリーズを読んだ年」です。数年に一度あるかないかの、心に深く刻まれる素晴らしい小説でした。三体シリーズは、単なるSF小説の枠を超え、科学技術、社会学、そして時間を超えた人類の物語を壮大に描き出した作品です。正直、最初はSFにも中国文学にも馴染みがなく、「読みにくそうだなぁ」という印象で読み始めました。ところが、第一部を読み終えた瞬間にどっぷりハマり、第二部、第三部と一気読みしてしまったのです。
第一部は文革の時代背景から物語が始まります。このパートが特に好きだという方も多い一方で、ここで挫折する人も少なくないようです。しかし、二部まで読んだ人は例外なく三部まで突き進んでいる印象です。もしこれから読む方がいれば、ぜひ二部まで読んでみてください。第一部は、あくまで壮大な物語へのプロローグなのです。
物語の主軸となるのは、“三体人”という異星文明が地球に侵略してくる話です。ただし、遠い宇宙からの侵略のため400年後という遠い未来のこと。400年もの猶予があれば対策ができそうですが、三体人は「ジャミング装置」を地球に送り込み、基礎科学研究の実験データを改ざんしてしまいます。この結果、人類は基礎科学の発展を封じられた状態、いわば「科学の進化にキャップをされた」状況で戦わざるを得なくなります。まさに最初から王手をかけられたような状況です。このような制約がある中で、どのように状況を打開するか。その描写は、現実のプロジェクトや経営における制約条件と向き合う姿勢にも通じるものがあります。リソースが限られる状況で知恵と工夫を駆使する人類の姿は、新たな視点を与えてくます。
暗黒森林理論と戦略の本質
第二部では”宇宙社会学”という概念が登場し、その「公理」から暗黒森林理論が導かれます。この理論が示すのは、未知の他者に対する猜疑の連鎖や、技術進化の競争が避けられないという過酷な現実です。その冷徹な合理性と論理展開は、まるで数学の証明を読んでいるかのような爽快感をもたらします。特に、「相手の意図がわからない状況でどうリスクを管理するか」というテーマは、現実の経営戦略や国際関係に通じるものがあります。この理論は、戦略立案者やリーダーにとっても思考のヒントとなります。そして、意外だったのは科学技術よりも「社会学」や「メタファー」が人類の戦う武器として描かれる場面が多いことです。社会全体を動かす意思決定や、文化や心理が戦略に与える影響が緻密に描かれています。また、三体シリーズでは、数百年、数千年という長い時間軸の中で、人類社会が変容し、価値観を進化させていく様子が描かれています。宇宙進出や異星文明との接触を通じて、地球中心の視点から、人類全体を俯瞰する視点への移行。その過程は非常にリアルで説得力があります。
三体シリーズは、科学、社会学、そして冷徹な合理性を通じて壮大な物語を描いています。もしまだ読んだことがない方がいれば、年末年始でぜひ手に取ってみてください。第一部は映像化されていますが、第二部は映像作品に向いていないので興味がある人は是非、原作を読んでいただきたいです。